はじめに:金利と株価の関係は「投資の基礎」
株式投資において「金利と株価の関係」を理解することは、進むべき道を教えてくれるとても重要なもので、
例えるなら、コンパスとか羅針盤とか地図のようなものです。
金利・景気・企業利益は密接に関係があり、“金利が動けば株価も動く”からです。
本記事では
- FRB(アメリカの中央銀行)
- 日本銀行(日本の中央銀行)
の2つの中央銀行を軸に、
なぜ金利が上がると株価が下がりやすいのか? なぜ利下げで株価が上がりやすいのか?
を徹底的に解説します。
金利が株価に与える“3つの直接影響”
金利が動くと、株価が動くのは以下の3つのメカニズムが働くからです。
① 企業の資金調達コストへの影響
企業はお金を借りて
- 設備投資
- 人件費
- 新規プロジェクト など・・・
今はない未来の売り上げを創出するための投資を行います。
ここで、金利が上昇し、借入金利が上昇するとどうなるでしょうか。
銀行に支払うコスト(利息)が多くなってしまうので、
こうした企業による自社を成長させるための投資行動が鈍くなりやすいです。
私たち投資家としても、自社を成長させるための投資行動が鈍い企業に対して投資をするのは好ましくありませんよね。
つまり「投資家が投資をしない→資金を引き上げる→株価は下がる」こうした連鎖が起こりやすくなります。
② 個人消費への影響
個人の消費にも大きな影響があります。
- 住宅ローン
- カーローン など
私たち個人にとってもお金を借りて生活を便利に、豊かにしてくれるものをローンを活用して手にいれることは少なくありません。
先ほどと同様にここで金利が上がると、住宅ローンやカードローンで支払う利息が多くなり、
「今はローン組むのやめとこうかな」「金額の小さいもので我慢しよう」という心理が働きやすくなります。
こうして「消費者の財布が固くなる → 企業の売上が減る→業績悪化→株価は下がる」という連鎖が起こりやすくなります。
③ 投資家心理への影響
投資家は
「今から投資をして株価が上昇するか?」を常に考えています。
その基本となるのが
“① 企業の資金調達コストへの影響”と”② 個人消費への影響”の考え方です。
「金利が上昇したら、株価は下がりそうだな」→「じゃあ売ろう」
「金利が下落したら、株価は上がりそうだな」→「じゃあ買おう」
というように投資家の売買によって株価は変動します。
ただ、ここで難しいのが実際の投資家は予測で動きます。
❌「金利が上昇したら、株価は下がりそうだな」→「じゃあ売ろう」
⭕️「金利が上昇しそうだから、株価は下がりそうだな」→「じゃあ売ろう」
❌「金利が下落したら、株価は上がりそうだな」→「じゃあ買おう」
⭕️「金利が下落しそうだから、株価は上がりそうだな」→「じゃあ買おう」
こうして、まだ金利は動いていないにもかかわらず、株価は先んじて動いていきます。
特に株式投資をはじめたての時はこの「予測で動く」スピード感に慣れるのが大事です。
2. 日米の金融政策スタンスの違いと株価の動き
■ アメリカ(FRB):金利政策が最も重要な国
直近の金利政策は以下のとおりです。
- 2020~2022年:コロナ禍による経済ダメージに対し、低金利で対応
- 2022〜2024年:物価の上昇を抑えるために急速な利上げを敢行
- 2024年後半〜:雇用統計の悪化などの経済停滞観測を受け、利下げを開始
図解:金利変動とS&P500の推移

図のようにアメリカは金利が株式マーケットの方向性を決める指標となっています。
そして金利の発表と同等の影響力をFRB議長の発言にはあり、株価が反応します。
■ 日本(日銀):超低金利 → 正常化へ
- 2023:マイナス金利解除の議論開始
- 2024年:マイナス金利から0.25%へ
- 2025:0.25%から0.50%へ
日本の株式市場は日本の政策金利と直接的な影響はアメリカほどありません。
日本の株式市場であっても、アメリカの政策金利の方が重要といっても過言ではありません。
とはいっても、日本の政策金利変動局面では以下のような恩恵を受ける業界はあります。
⇧金利上昇局面(現在)
・銀行株・保険株 → 上昇
⇩金利下落局面
ハイテク企業→上昇
3. 具体例:金利が上がったとき株価はどう動いた?
利上げ時に株価に目立った動きにあった企業の当時の株価 を紹介します。
■ アメリカ(2022年)利上げ局面
- 金利:0.25% → 4.50%
- Apple:182ドル → 130ドル近辺
- Meta:338ドル → 88ドル
- 理由:グロース株が急落
■ 日本(2024年)金利正常化局面
- 政策金利:0% → 0.25%
- 三菱UFJ:900円 → 1,500円(銀行株が恩恵)
- ソニーG:13,000円 → 10,000円台(ハイテクが調整)
4. 金利局面別の戦略
● 金利上昇(利上げ)で強い
- 銀行(利ざやが拡大)
- 保険
- エネルギー
- 生活必需品(景気に左右されにくい)
● 金利下落(利下げ)で強い
- グロース、メーカー(ローン負担減で企業投資拡大)
- 小売、サービス(ローン負担減で消費拡大)
- 不動産(ローン金利下落で需要拡大)
5. まとめ:金利は“株式投資の羅針盤”。理解できれば投資が一気に安定する
- 金利が上がる → 株価は下がりやすい(経済縮小、需要減)
- 金利が下がる → 株価は上がりやすい(経済拡大、需要増)
- 日米で金融政策の影響度は違うが、金利は常に株価の最重要ドライバー
- セクター別の動きが読めるようになると「勝てる投資」ができる
金利と株価の動きは、理解できると
“ニュースを見ただけで相場の方向性がつかめる”
という圧倒的な武器になります。
参考資料
- FRB「Monetary Policy Report」
- 日本銀行「金融政策決定会合 発表」
- S&P Dow Jones Indices
- 日経平均採用銘柄データ
(最終更新:2025年11月1日時点)
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