はじめに:老後資金づくりを国が応援する制度
「老後は国の年金だけで安泰!」と考える人はかなり少数派になってきていますよね。老後資金はこのままで足りるのか——そんな相談をたくさん受けています。
そんな中、国が用意している「自分で年金を作る制度」がiDeCo(個人型確定拠出年金)です。
iDeCoは、毎月積み立てて自分で運用し、60歳以降に年金や一時金として受け取る仕組みです。
節税効果が大きいことから、iDeCoで老後資金を準備する人も増えてきています。。
iDeCoの基本をやさしく解説
iDeCoは「自分で積み立て、自分で運用し、自分で受け取る」年金制度です。
毎月拠出する掛金を投資信託や定期預金で運用し、運用成果がそのまま将来の年金額になります。
iDeCoの3つのステップ
- 積み立てる(毎月5,000円〜)
- 運用する(投資信託・定期預金・保険商品など)
- 受け取る(60歳以降に年金または一時金で)
iDeCoの3大税制メリット
① 掛金が全額所得控除
毎月の拠出額がそのまま全額所得控除になります。
所得控除とは、支払う税金が少なくできる制度です。
これがiDeCoの最大のメリットになります。
② 運用益が非課税
通常は運用益に約20%の税金がかかりますが、iDeCoでは運用益が非課税。
NISAと同じ非課税制度です。
③ 受け取り時も控除が適用
受取時には「退職所得控除」または「公的年金等控除」が使えるため、受け取り時の税負担も軽減されます。
そして、iDeCoで作り上げた資産を受け取る際に一括受け取りと年金受け取りを自由に決められます。
その一括受け取り部分が退職所得控除の対象となり、年金受け取り分が公的年金等控除の対象となります。
年収別の節税効果シミュレーション
年収ごとの節税効果を見てみましょう。
(年間24万円=月2万円を拠出した場合の概算)
独身、30歳、会社員の場合
| 年収 | 想定税率(所得税+住民税) | 年間節税額 | 20年間の合計節税額 |
|---|---|---|---|
| 400万円 | 約15% | 約3.6万円 | 約72万円 |
| 600万円 | 約20% | 約4.8万円 | 約96万円 |
| 800万円 | 約23% | 約5.5万円 | 約110万円 |
つまり、「節税しながら老後資金を作れる」のがiDeCoの最大の強み。
拠出を続けるだけで、将来の資金+税金の還付という2つのメリットが得られます。
※計算については概算となりますので目安としてしていただければと思います。
iDeCoのデメリット・注意点
① 60歳まで引き出せない
途中でお金が必要になっても、原則として60歳まで引き出せません。
老後資金専用の制度と割り切ることが大切です。
ここが最大のデメリットです。
何かの事情でお金が必要になった時に、iDeCoのお金を使うことはできません。
必ず、ライフプランをしっかり組んだ上で利用するようにしましょう!
② 手数料がかかる
iDeCoには以下のような手数料が発生します。
- 加入時手数料:約2,829円(初回のみ)
- 運営管理手数料:毎月約171〜500円(金融機関による)
- 信託報酬(投資信託の運用コスト):年0.1〜1%程度
注意!
途中で拠出を停止しても、運営管理手数料は引かれ続けます。
完全に放置すると、資産が減るケースもあるため注意が必要です。
③ 選べる商品が少ない
NISAに比べると、iDeCoで選べる商品は限られています。
「全世界株式」や「S&P500」などの王道商品はありますが、ラインナップは証券会社によって異なります。
④ 手数料が高い商品も混在
iDeCoの投資信託には、高い信託報酬(年1%超)のものも紛れています。
手数料が高い商品はリターンを圧迫するため、必ずコストを比較しましょう。
この点は非常に注意です。
iDeCoの対象者と掛金上限
| 区分 | 掛金上限(月額) | 主な特徴 |
|---|---|---|
| 自営業(第1号) | 68,000円 | 国民年金基金との併用可能 |
| 会社員(企業年金なし) | 23,000円 | 多くの会社員が該当 |
| 会社員(企業年金あり) | 12,000円 | 企業型DC加入者も利用可能 |
| 公務員 | 12,000円 | 制度拡充で利用可能に |
| 専業主婦(夫) | 23,000円 | 所得がなくても加入可能 |
iDeCoとNISAの違いを簡単に整理
| 項目 | iDeCo | 新NISA |
|---|---|---|
| 目的 | 老後資金づくり | 資産形成全般 |
| 税制優遇 | 掛金・運用・受取すべて優遇 | 運用益のみ非課税 |
| 引き出し | 60歳まで不可 | いつでも可能 |
| 手数料 | あり | なし |
| 向いている人 | 老後資金をコツコツ準備したい人 | 目的を自由に運用したい人 |
よくある落とし穴と対策
| 落とし穴 | 内容 | 対策 |
|---|---|---|
| 途中でやめたら損をする? | 拠出を止めても手数料は発生 | 少額でも積立継続を意識 |
| 商品が多くて選べない | 銘柄数が少ない一方で高コスト商品が紛れる | 信託報酬0.2%以下の低コスト商品を選ぶ |
| 60歳まで引き出せないのが不安 | 老後資金専用と割り切る | NISAと併用して”流動性”を確保 |
まとめ:iDeCoは「節税しながら将来を守る」仕組み
iDeCoは、税金を味方につけて老後資金を準備できる最強の制度です。
ただし、途中で引き出せない制約や手数料の仕組みを理解した上で始めることが大切。
「NISAで資産を育て、iDeCoで将来を守る」——
この2本柱で、長期的な資産形成をより安定させましょう。
参考・出典:
- 国民年金基金連合会「iDeCo公式サイト」
- 金融庁「iDeCoの概要」
- 日本証券業協会「確定拠出年金制度の仕組み」
(最終更新:2025年1月時点)

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