はじめに:「数字を読める投資家」になることが成長の分かれ道
これから株式投資でリスクを取るために
「なぜこの企業は成長するのか?」の根拠をなんとなくの感覚で考えるか
今回解説する、データで考えるかが大きな別れ道となります。
得意な業界なら感覚でもOKなのですが、
まずはデータで企業の”本当の強さ”を見抜く力を身につけましょう!
自己資本比率などの指標は、例えるなら「企業の健康診断書」。
それぞれの数字の意味を理解できれば、株価の裏にある企業の実力が見えるようになります。
時価総額(Market Capitalization)=会社の”値段”
時価総額 = 株価 × 発行済株式数
時価総額は「企業の規模を測る基準」です。
株価が1,000円で発行済株式が1億株なら、時価総額は1,000億円。
見方のポイント:
- 1兆円以上:大型株(トヨタ・ソニーなど)
- 1,000億円〜1兆円未満:中型株(成長企業や業界2〜3位)
- 1,000億円未満:小型株(新興企業や地方企業)
大型株は安定性、小型株は成長性を重視する傾向があります。。
大型株の安定性を投資で活かすには配当金や株主優待の獲得を狙った長期投資の戦略となります。
ただ、安定と言っても年間で±10%以上の値動きは当然にあるので要注意です!
一方で小型株の成長性は値上がり益狙いの投資になります。
安く買って高くう売るための売買のタイミングが非常に重要で株式投資の醍醐味でもあります。
自分の投資戦略に照らし合わせて、「どの規模の企業に投資するか」を決める物差しとして時価総額を見て判断します!
PER(株価収益率)=株価が利益の何倍か
PER = 株価 ÷ 1株あたり利益(EPS)
企業が1年間にどれだけ稼ぐかに対して、株価がどのくらい割高・割安なのかを表します。
使い方の目安:
- PERが低い(10倍以下) → 割安株(業績が安定した成熟企業に多い)
- PERが高い(30倍以上) → 成長株(今後の利益拡大が期待されている企業)
例:
- トヨタ:PER 約12倍(安定・成熟企業)
- エヌビディア:PER 約30〜40倍(高成長・期待先行)
株価は今後成長するかも!という期待で買われます。
つまり、株価が高いということは大きな期待がされているということです。
ただ期待だけが先走って肝心な企業の利益(=実力)が成長してくれないとダメですよね。
この期待と実力のバランスを数値化してくれているのがPERです!
期待が大きすぎ(=PER高)の場合、裏切られた(決算悪い)時に大きく株価は下落します。
逆にまだ期待がされていない(=PER低)場合は、決算が悪くても裏切られずらいですし、決算がよかったら予想以上に株価は上昇します。
だからこそ、PERは低い方がリスクがまずは狙い目です!
PERの高い低いの判断は
数字単体で判断せず、「同業他社との比較」が鉄則です。
EPS(1株あたり利益)=企業の”稼ぐ力”
EPS = 純利益 ÷ 発行株式数
EPSはひとことで言うなら、企業の実力を表しています。
期待と実力のバランスを測るのがPERでしたが、その実力部分がこのEPSです。
どんな数値なのかと言うと、株主1人あたりがどれだけ利益を得ているかを示す指標。
EPSが毎年伸びている企業は、利益成長が継続している強い企業といえます。
チェックのコツ:
- 過去5年のEPS推移を確認
- 一時的な利益ではなく、継続的な増加トレンドがあるか
- 株式分割・自社株買いにも注目(EPSを上げる効果あり)
ROE(自己資本利益率)=株主のお金でどれだけ稼いだか
ROE = 当期純利益 ÷ 自己資本
企業の自己資本に対して、どれだけの利益を生み出しているか。
例えるなら私たち投資家も、少ない資金で大きい利益を出す投資家が優秀な投資家ですよね?
それと同様に、
企業も資本に対して大きな利益を出しているような企業は優秀な経営者によって経営されている企業ということになります。
つまり、ROEが高い企業は利益を効率的に出している企業ということになります。
目安:
- 10%以上:優秀な経営
- 15%以上:非常に効率的(グロース企業に多い)
同じ利益でも、少ない資本で多く稼げる企業ほど高ROEになり、
投資先として優秀ということです!
配当性向と配当利回り=株主への”還元姿勢”
- 配当性向 = 配当金 ÷ 純利益
- 配当利回り = 年間配当 ÷ 株価
先ほど、時価総額の大きい企業は安定しているので配当金や株主優待目的の投資がいいと伝えましたが、
ただ時価総額が大きいだけでは配当金を目的とした投資には適していません。
そこで注目したいのがこの配当性向です。
配当性向が高い企業は利益を株主にたくさん還元していることを意味しています。
利益の使い道には株主還元の他に、人件費アップ設備投資や負債の返済などがあり、
その中で株主還元を優先する企業に投資家は集ま流傾向があります。
逆に利益が安定していても、株主還元が弱い企業は投資家にとっては投資をする魅力が下がります。
理解のポイント:
- 配当性向30〜50%:健全バランス(成長+還元両立)
- 配当利回り3%以上:インカム投資として魅力あり
注意すべきは「利回りが高すぎる=業績悪化で株価が下がっている」ケースもある点。
“高配当だから買う”ではなく、”持続的に払えるか”を見極めることが重要です。
PBR(株価純資産倍率)=株価と”解散価値”との比較
PBR = 株価 ÷ 1株あたり純資産
「投資している企業が潰れたら、保有している株が紙切れになる」
と聞いたことがある人は多いと思います。
ただ、これは間違いの可能性が高いです。
企業が倒産したこと人で例えるなら、亡くなってしまうのと同じです。
例えば私が今、急病で死んでしまった場合、相続が発生します。
貯金残高や保有株などの資産は現金化されて相続人に相続されます。
また、ローンを組んでいたらそのローンも相続の対象となります。
そのため、プラスの資産もマイナスの負債も相続人に引き継がれる形となります。
人が亡くなった時は血族や配偶者に相続となりますが、
会社の場合はその企業の株を持ってる人つまり株主が相続人になります。
会社が倒産した場合、その企業の資産を全て現金化して株主の持つ株数に応じて
資産を割り当てします。
そのため、資産がなければ当然0となりますが、資産があった場合にはその資産が株主で分配されます。
解散価値というのは今倒産した場合の企業が持つ資産の価値です。
PBRは、今会社が倒産した場合の企業の資産価値と株価の関係を示します。
PBRが1倍なら、「会社を解散して全資産を配分した金額と現在の株価が同じ金額となる」状態を表しています。
PBRが1倍より上なら、「会社を解散して全資産を配分した金額と現在の株価では現在の株価が高い」状態を表し、
PBRが1倍より下なら、「会社を解散して全資産を配分した金額と現在の株価では現在の株価が低い」状態を表します。
目安:
- 1倍以下:株価が解散価値より安い(割安)
- 2倍以上:株価が資産より期待が上乗せされている状態 (割高)
ただし、成長企業は高PBRでも問題なし。
「資産」ではなく「未来」に投資されていると理解しましょう。
自己資本比率=財務の”安定性”
自己資本比率 = 自己資本 ÷ 総資産
企業の資金のうち、どれだけが借金ではなく自分のお金で賄われているかを表す指標です。
企業は基本的に借金をして事業を始めたり、成長させたりします。
その後、借金したお金以上に利益をだします。
この借金の量が多すぎると利益を出しても返済に追われたり、
利益が思った以上に出なかった時に倒産する可能性が大きくなります。
自己資本比率が高い企業は倒産のリスクが低い傾向にあるため
まずは自己資本比率が高い企業から投資をスタートするといいですね!
目安:
- 50%以上:健全
- 30%未満:要注意(借入依存が高い)
製造業やインフラ業など資金が多く必要な業界では、自己資本比率が低くても問題ないケースもあります。
まとめ:企業を数字で丸裸に!
これらの指標は「なんか良さそう」と思った企業の裏付けとなる数字たちです。
多くの投資家が集まる企業はこうした指標が優れているからなんです。
どんなビジネスで、どれだけ効率的に利益を出して、今後も成長しそうか
株価が上下に動くことだけに惑わされず、指標をチェックすることで企業の本質と未来の成長が見えてきます。
数字を読む力は、投資家の最大の武器。
ぜひこの章で、「数字から企業の物語を読む」習慣を身につけましょう。
参考・出典:
- 金融庁「企業分析の基本」
- 日本取引所グループ「株価指標の基礎」
- QUICKファイナンス「投資指標の見方」
(最終更新:2025年1月時点)
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