円安・円高が企業の利益や株価にどう影響するのか、
輸出企業・輸入企業の構造、日米実例、セクター別の特徴を交えて解説します!
はじめに:円安・円高は“企業の利益”を直接動かす超重要指標
株式投資をする上でも、為替は重要な役割を担っています。
なぜなら、円安・円高は企業の利益そのものを大きく変えるからです。
この記事では、
- 輸出企業
- 輸入企業
それぞれの企業の利益がどう動くかを理解し、
さらに日米の実例を交えながら、為替と株価の関係を解説します。
1. 為替が企業利益に与える基本構造
まずは円安、円高の影響を視覚で捉えましょう。
【図解:円安/円高 → 企業利益への影響図】

このように、日本の車メーカーが1台アメリカに輸出した場合、
全く同じ車が現地で3万米ドルで販売された時、
日本の車メーカーが受け取る円は為替の影響で180万円も異なる可能性があります。
この時、円安の方が日本の輸出企業にとっては嬉しいので円安メリット、
逆に円高の方が日本の輸出企業にとって残念なので、円高デメリットとなります。
● 円安になると…
- 輸出企業:売り上げが増え、利益が増えやすい
- 輸入企業:コストが増え、利益が減りやすい
● 円高になると…
- 輸出企業:売上が減り、利益が減りやすい
- 輸入企業:コストが下がり、利益が増えやすい
為替はこうして「利益構造」に影響を与えることで、業績に影響を与え、株価にも影響します。
2. 輸出企業の利益構造(円安でプラス)
代表業種は自動車・半導体・精密機器・機械などが日本から世界に輸出して利益を出している企業が多いです。
ただ、企業ごとに輸出を強みにしているかどうかは変わるので業種だけで判断するのは、注意が必要です!
◆ 日本企業の代表例
| 企業 | 為替の影響 |
|---|---|
| トヨタ自動車(7203) | 1円の円安で約50億円規模の営業利益押し上げ効果 |
| ソニーグループ(6758) | 海外売上比率70%以上 → 円安追い風 |
| キヤノン(7751) | 物流コストの改善などによる粗利益率の改善効果 |
特に自動車は「1円の円安で数百億円の利益増」という構造があるため、為替で株価が動きやすい典型例です。
逆に、輸入企業にとって円安はマイナス影響があります。
代表業種は小売、外食、エネルギー、航空、食品などです。
理由は、海外の商品や原材料を仕入れる場合、ドルでの支払いの場合が多いからです。
◆ 円安でコストが上がり、利益が圧迫される
例:原材料100ドル
- 1ドル100円 → 10,000円
- 1ドル160円 → 16,000円
今まで10,000円で仕入れができていたものが円安で16,000円払わなければ仕入れができない状態となれば
利益を削るか販売価格を上げざるを得ません。
仮に販売価格を上げても、仕入れの値段が上がっただけなので、利益は同じです。
◆日本企業の代表例
| 企業 | 特徴 |
|---|---|
| ENEOS(5020) | 石油はほぼ輸入に頼っているため。コスト増 |
| ニチレイ(2871) | 海外原材料を輸入して、国内売上を立てる典型 |
| JAL:日本航空(9201) | 国内線が売上の柱。航空燃料が輸入のため。 |
4. 為替局面別「狙い目セクター」
● 円安で強い(円高で弱い)
- 自動車
- 半導体(製造装置メーカー含む)
- 精密機器
- 機械
- 海外売上比率が高い企業全般
● 円高で強い(円安で弱い)
- 小売
- 外食
- 航空
- エネルギー消費産業
- 食品(原材料輸入)
5. 見るべき詳細ポイント
| 観点 | 内容 |
|---|---|
| 企業の海外売上比率 | 40%以上なら為替の影響は非常に大きい |
| 原材料は輸入が多いか? | 仕入れ元は海外か |
| 為替ヘッジの有無 | 海外子会社の存在や輸入輸出に頼らない対応力の有無 |
| 決算コメント | 決算で為替への言及にてどう説明しているか |
まとめ:為替を押さえると企業の“真の収益力”が見えてくる
- 円安は輸出企業にプラス、輸入企業にマイナス
- 円高は輸出企業マイナス、輸入企業プラス
- 投資判断では
「海外売上」×「輸入コスト」×「為替変動への対応力の有無」
をセットで見るのが最重要
ただ、為替は株価変動の要因の1つに過ぎません。「円安なのに、輸入企業が上昇してる・・・」時もあります。
その企業にとって円安というよくない要因を吹き飛ばすくらいのいいニュースがあれば株価は上昇します。
為替の影響を理解したら、分析要素の一つとして組み込んでニュースを追っていきましょう!
参考資料(2025年11月1日時点)
- トヨタ自動車「業績・為替感応度データ」
- 日本銀行「為替レート統計」
- FRB「ドル指数データ」
- 各企業IR資料
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